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Author:スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット、濱野大道

Title:民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―

Date:月曜日 11月 12, 2018, 102 highlights

@22
本書の著者は、こう断言する。〈今日の民主主義の後退は、選挙によって始まるのだ〉
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@69
合衆国憲法の起草者たちは、〈一般市民が候補者の適性を確実に判断できるとは考えていなかった。アレクサンダー・ハミルトンが心配したのは、人気投票だけで大統領が選ばれた場合、恐怖や無知を巧みに利用する人物がいとも簡単に当選し、暴君として国を支配するようになるのではないかということだった〉。  そこで各州が有識者を選挙人として選び、彼らが自分たちに代わって投票するようになった。しかし、やがて政党が登場すると、各州は、特定の政党支持者を選ぶようになる。
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@82
私たちはヘンリー・フォードのことを自動車のフォードを大量生産するシステムを築いた自動車王としてしか認識していないが、フォードは反ユダヤ主義者で人種差別主義者だった。ドイツのアドルフ・ヒトラーはフォードを絶賛していた。その後、一九三八年にナチ政権はフォードに勲章を贈っている。  もしフォードが大統領に就任していたら、アメリカは反ユダヤ主義の立場でドイツと協力していたかもしれない。
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@87
フォードが民主党の大統領候補になるのを阻止したシステムは、一九四〇年の共和党大会でチャールズ・リンドバーグが候補になるのを阻止するときにも働いた。リンドバーグといえば、大西洋を無着陸で単独横断飛行した英雄だ。アメリカ国民の圧倒的な支持を得たリンドバーグは、「民族純化」を唱え、ナチ政権下のドイツを回って勲章を授与されている。アメリカ大統領への野心を隠さなかったリンドバーグは、「アメリカ優先委員会」(アメリカ・ファースト・コミティ) を代表して全米を演説して回ったという。このとき「アメリカ・ファースト」という言葉が出ているのだ。
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@96
全国から選ばれた代議員たちが多数決で大統領候補を決めるべきだという声が高くなり、一九七二年の大統領選挙から、現在のようなシステムが確立した。〈民主・共和両党の圧倒的大多数の代議員が州単位の予備選挙や党員集会で選ばれることになった〉
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@98
改革に先立ち、二人の政治学者が、こう警告していたという。 〈事前選挙によって過激派や大衆扇動家の候補が生まれやすくなる。党への忠誠心をもたない彼らには失うものなど何もなく、平気で国民の憎悪を搔き立て、くだらない約束をするにちがいない〉
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@179
多くのアメリカ国民と同じように、私たちは恐怖を感じながらも、 この国でそんなに悪い事態になるはずがない と自分に言い聞かせようとしている。
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@207
冷戦のあいだに起きた民主主義の崩壊の四分の三近くは、クーデターによるものだった。
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@282
日々の新聞の見出しや緊急ニュース速報に満ちた世界から一歩離れる必要がある。もっと視野を広げ、これまでの歴史のなかで世界の民主主義が経験してきたことから教訓を導き出さなくてはいけない。ほかの国の民主主義の危機について学ぶことによって、私たちは自国の民主主義が向き合っている課題についてより深く理解できるようになる。
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@408
反乱は当局によって抑え込まれ、ヒトラーは九カ月にわたって刑務所暮らしをすることになる。そのあいだに彼は悪名高い自伝的著書『我が闘争』を書き上げ、選挙によって権力を手にしてみせると 公 に訴えるようになった。
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@416
ワイマール憲法には、議会が過半数の票を超える指名候補を出せないという例外的なケースにおいて、大統領が首相を指名できるという規定があった。
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@430
フォン・パーペンは自らの不安を追い払い、危機状態にあるドイツの首相にアドルフ・ヒトラーを就任させるという賭けに出た。
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@440
カリスマ的なアウトサイダーが現われ、旧体制への抵抗によって人気を得たとき、力を失いつつある主流派の政治家たちは、その人物を自分の側に惹き入れようと考えたくなるものだ。ライバルよりさきにその反乱者と手を組むことに成功したインサイダーは、アウトサイダーの勢いと人気を利用し、ほかの政治家よりもうまく立ちまわることができるようになる。そして主流派の政治家は、自分の政策の実現のためにアウトサイダーを利用できると考えるようになるのだ。
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@536
民主主義のなかで〝人民〟が思いどおりに自らの政府を形作ることができるという理想論にすぎない。一九二〇年代のドイツとイタリアにおいて、大多数の有権者が独裁政治を支持していたとは考えにくい。
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@566
明らかに反民主主義的な行動の形跡がない政治家の場合、その内に隠れた独裁主義を見抜くためにはどうすればいいのか?
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@570
民主体制の崩壊 危機・崩壊・均衡回復』(内山秀夫訳、岩波書店、
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@591
ポピュリストが選挙に勝ったとき、彼らの多くは民主主義の制度を攻撃するようになる。たとえば南米では、一九九〇年から二〇一二年のあいだにボリビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラで当選した全一五人の大統領のうち、五人がポピュリストのアウトサイダーだった─
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@692
自らの利益よりも民主主義を保つことを優先して大連立を支持した
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@864
アメリカでは古くから多くの独裁主義者が活躍してきた。カフリン、ロング、マッカーシー、ウォレスのような人物が、有権者の三〇~四〇パーセントに上る 大きな少数派 から支持を得るのは珍しいことではなかった。
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@899
当時、大統領候補は小さな黒幕の集団によって選ばれていた。一般市民に対してはもちろんのこと、黒幕は党員に対して理由を説明する必要もなかった。さらに、煙に満ちた部屋が必ずしも優れた大統領を生み出すとはかぎらなかった。事実、ハーディング政権はスキャンダルまみれだった。しかし密室での候補者選びには、今日では忘れられがちな利点もあった──門番として機能し、明らかに不適切な人物が選挙に出たり要職に就いたりするのを防ぐことができた。
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@956
設立から今日まで大統領候補指名プロセスの中心に緊張状態を生み出しつづけてきた。門番を過度に信頼するのは、それ自体が非民主主義的である。なぜなら、党の重鎮たちが党員を無視すれば、人々の意見が反映されない状況になってしまうからだ。しかし反対に〝人々の意見〟を過度に信頼すれば、民主主義そのものを脅かす大衆扇動家の当選につながる危険性が出てくる。この緊張から逃げる方法はなく、どこかで必ず妥協が必要になる。
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@1040
予備選挙が行なわれない州では、 事実上これらの組織メンバーが党全国大会に送る代議員を独断で選んでいる……
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@1192
党のエスタブリッシュメントによる影響を避けることは、理論上は簡単にみえたものの、現実的にはむずかしかった。代議員の過半数を得るには、国じゅうで予備選に勝つ必要があった。そのためには、資金、友好的なメディアの報道、そしてなによりもすべての州の現場で働くスタッフが必要だった。アメリカの予備選という厄介な障害物競走を走り抜こうとする候補者には、資金提供者、新聞記者、利益団体、活動家団体、そして州知事、市長、上下院議員といった州レベルの政治家との協力が不可欠になった( 65)。一九七六年、ジャーナリストのアーサー・ハドリーはこの困難な道のりを「眼に見えない予備選挙( 66)」と評し、実際には予備選がまだ始まってもいない段階で「勝つ候補者が選ばれている( 67)」と述べた。
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@1212
ヘンリー・フォードと同じように、トランプも過激主義的な考えをもっていた。彼がもっとも直近で政治にかかわったのは、バラク・オバマ大統領が米国出身であることを疑問視する「バーサー(出生地を疑う人々)」運動にかかわったことだった。
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@1252
トランプには何度か党の登録を変えた過去があり、ヒラリー・クリントンの上院議員選挙の応援までしたことがあった。
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@1256
彼が立候補を表明してから二カ月後、ラスベガスのブックメーカーはトランプの大統領当選に一〇一倍のオッズをつけた( 3)。
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@1273
伝統的な門番の影響力が弱まったもうひとつの大きな要因は、ケーブルニュースとソーシャルメディアを軸とした代替的なメディアが爆発的に増えたことにある( 6)。かつて全国的に知名度を高めるためには、数の限られた主流メディアで露出を増やすという道しかなく、そのようなメディアは過激主義者よりもエスタブリッシュメント側の政治家を好んだ。
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@1336
物議を醸す言動によって 無料 で主流メディアに自らを露出させることができた。ある試算によると、MSNBC、CNN、CBS、NBC──〝親トランプ〟ともっともかけ離れた四大放送局──のツイッター・アカウントでは、大統領選のライバルであるヒラリー・クリントンの名前よりも、トランプの名前が二倍の頻度で言及されたという。
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@1339
予備選挙のあいだに流れた報道だけで、トランプに対する露出効果は二〇億ドル近くに達したと算出された( 17)。
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@1409
有権者の四一パーセント(共和党支持者の七三パーセント) が、選挙の勝利が不当にトランプから奪われる恐れがあると答えた( 25)。言い換えれば、四人に三人の共和党支持者は、自由選挙を有する民主主義体制のもとで暮らしているかどうか定かではないと考えていたことになる。
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@1494
民主主義を脅かす指導者に権力を与えること──は、ふたつの原因のどちらかひとつから起きることが多い。ひとつ目は、独裁者を制御、あるいは手なずけることができるという誤った信念。ふたつ目は、社会学者のイワン・エルマコフが「イデオロギーの共謀( 34)」と呼ぶもの。つまり、「権力の放棄が望ましい」または「少なくともほかの代替案よりは望ましい」という主流の政治家の思惑と、独裁者の思惑がある程度重なり合う状態だ。
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@1508
共和党員にとって、それは政治的な勇気が試される瞬間だった。国の利益のために、彼らは短いあいだだけ犠牲を受け容れることができるだろうか?
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@1541
著名な共和党員のうちヒラリー・クリントン支持を表明したのは、すでに引退した政治家や官僚だけだった。彼らは今後選挙に出ることを考えておらず、政治的に失うものがない人々だった。
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@1570
近年、アメリカ人は共和党と民主党のどちらかの支持にはっきりと態度が分かれる傾向が強く、真の無党派層や浮動票投票者はほとんどいなくなった( 43)。
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@1575
二〇〇〇年代に入ると、候補者が誰であるかにかかわらず、大統領選挙はつねに僅差の勝負になった。  選挙が五分五分の勝負になるふたつ目の理由として、政治学的な調査や研究のほぼすべてにおいて「接戦の選挙になる」という予測が出ていたことが挙げられる。
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@1664
選挙で選ばれた大衆扇動家のなかには、独裁のための青写真を描いたうえで就任する者もいる。しかし、フジモリのようにそうではない者も多い。民主主義の崩壊に青写真は必要ない。むしろペルーの経験が示すのは、予期せぬ出来事の積み重ねの結果として民主主義が崩壊するということだ。
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@1684
世界各地の扇動的な指導者の行動を少し見ただけでも、彼らの多くが最終的に一線を越えて、言葉から行動に移っていることがわかるはずだ。なぜか? 大衆扇動家が権力の座に就くことによって社会全体が二極化し、パニック、敵意、相互不信の空気が作り出される傾向があるからだ。新しい指導者が発する脅迫的な言葉は、しばしばブーメラン効果を生み出す。
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@1703
すべての政治家がこの制約にもどかしさを感じているものの、民主的な政治家はそれを受け容れなければいけないと知っている。そのような政治家は、絶え間ない批判の嵐を乗り切ることができる。しかし、とりわけ扇動的な傾向があるアウトサイダーにとって、民主主義的な政治はときとして耐えがたいほどもどかしいものだ。
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@1853
二〇〇九年に反撃に出た政府は、ドアンに脱税の罪でおよそ二五億ドルの罰金を科した。その額は、会社の総純資産をほぼ上まわるものだった。危機にひんしたドアンは、ふたつの大手新聞社とテレビ局一社を含むグループの多くの会社を売却することを余儀なくされた。
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@1890
彼が大統領選に出馬するという噂もささやかれていた。危機感を抱いたプーチンは、二〇〇三年に脱税、横領、詐欺の罪でホドルコフスキーを逮捕( 52)。その後、彼は一〇年近く投獄されることになった。プーチンのオリガルヒへのメッセージははっきりしたものだった──政治にかかわるな。ほぼ全員がそれにしたがった。そして資金源を失った野党の力は弱まり、多くはそのまま消滅した(
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@1988
アフリカ系アメリカ人は圧倒的な割合で共和党に投票したため、黒人の解放によって共和党やそのほかのライバルたちが活気づき、それまで支配的な力を誇っていた民主党を弱体化させていった(
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@2000
一八八五年から一九〇八年にかけて、旧南部連合の一一州すべてで州憲法と選挙法が改正され、アフリカ系アメリカ人の選挙権は剝奪された( 74)。
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@2003
人種を理由に選挙権を制限することはできなかった。すると各州は〝中立的な〟投票税、資産条件、識字能力の試験、複雑な書面を利用した投票システムを導入した( 75)。歴史家のアレックス・キーザーは、「これらのすべての制限のもっとも重要な目的は、文字の読めない貧しい黒人を投票所から追い出すことだった( 76)」と論じる。
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@2020
サウスカロライナ州は投票税と識字能力の試験を導入。一八七六年に九六パーセントに達していた黒人の投票率は、一八九八年にはわずか一一パーセントまで下がった(
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@2044
合法的または中立的に見せかけた措置が「南部の有権者のほぼ全員を確実に白人にする( 85)」ために用いられた。
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@2072
危機が起きるのを予測するのはむずかしいが、そのあとに政治の世界で何が起きるのかを予測するのは容易なことだ。危機は権力の集中を生み、決まって権力の乱用へとつながる。
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@2084
安全保障への危機が起き、とりわけ自らの安全に怖れを抱いたとき、市民はいつも以上に独裁的な措置を受け容れ、ときにそれを支持するようになる( 92)。
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@2099
選挙で選ばれた独裁者はしばしば危機を 必要とする。外からの脅威は、彼らを迅速かつ〝合法的に〟制約から解き放つ機会を与えてくれるのだ。
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@2119
米諜報当局によれば、この爆弾テロはフィリピン政府軍による自作自演だった可能性が高いという( 102)。また、エンリレ国防相の〝暗殺未遂〟は、のちに彼自身が認めたように「偽装」でしかなかった。実際、彼は暗殺未遂が起こったとされる場所の近くにさえいなかったという( 103)。
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@2207
憲法に書かれた言葉に厳密にしたがったとしても、それが法律の精神を損なう場合もある。たとえば、労働者による抗議活動のなかでもっとも大きな破壊力をもつ方法のひとつに「遵法闘争」がある。これは、労働者が契約や職務規定で定められたことだけを行ない、それ以外は何もしないというものだ。つまり、彼らは規則に書かれた文字のとおりの行動をしていることになる。しかし、ほぼまちがいなく職場は機能しなくなる。
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@2240
ストリート・バスケットボールのゲームを例に考えてみよう。ストリート・バスケットボールには、NBAや全米大学体育協会(NCAA) などのリーグで決められた規則は適用されない。さらに、そういったルールを見張る審判もいない。ゲームが大混乱に陥るのを防いでくれるのは、何が赦され、何が赦されていないのかという共通の理解だけだ。
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@2255
民主主義には明文化されたルール(憲法) があるし、審判(裁判所) もいる。しかし、それらがもっともうまく機能し、もっとも長く生き残るのは、明文化された憲法が独自の不文律によって強く支えられている国だ(
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@2268
なかでもふたつの規範が、民主主義を機能させるために必要不可欠なものとして君臨している
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@2270
対立相手は敵ではない
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@2272
相手に同意できず、ときに強い反感をもつことがあるとしても、私たちは対立相手を正当な存在として受け容れなければいけない。
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@2279
常識的な考えに聞こえるものの、政治的な対立相手を敵ではないと認めることは驚くほど革新的で洗練された行動だ( 18)。歴史を通じて、権力者に楯突くことは反逆行為だとみなされていた。
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@2356
自制心の規範が強い環境下にいる政治家は、たとえそれが厳密には合法であっても、制度上の特権を目いっぱい利用したりしない。
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@2373
民主主義を「永遠にプレーしつづけるべきスポーツの試合」だと考えてみてほしい。次のラウンドでの試合を続けるためには、相手チームの能力を奪ったり、向こうに敵意を抱かせたりしてはいけない。そのような態度が行き過ぎれば、ライバル・チームは明日の対戦を拒むにちがいない。ライバルが試合を放棄してしまえば、もうプレーを続けることはできなくなる。つまり、勝つことを目指すとしても、それぞれのプレーヤーは一定の節度をもって試合に臨まなければいけないということだ。
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@2384
英首相を選ぶことは国王大権である。正式には、王や女王が誰かを選び、その人物が首相として政府を作ることになっている( 39)」。実際には、庶民院(イギリスの下院) の過半数の議員を指揮することのできる国会議員──通常、国会で最大の議席をもつ党の党首──が首相になる。私たちはこのプロセスを当然のことのようにとらえがちだが、王や女王は何世紀ものあいだ 自発的に この慣習にしたがってきたにすぎない。イギリスには現在でも、このようなルールを定める成文憲法は存在しない。
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@2497
相互的寛容がうまく働いた状況では、負けることは政治的なプロセスのなかの日常的かつ当たりまえの一部にすぎない。しかし相互的寛容が薄れたとき、負けることは大失敗に変わる。負けたときの犠牲が大きいと感じたとき、政治家は自制心を放棄したくなるものだ。そうやってどちらかが憲法違反ぎりぎりの強硬手段に頼るようになると、相互的寛容はさらに損なわれ、ライバルが危険な脅威であるという信念もいっそう強まっていく。
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@2811
大統領の正式な権限を規定する合衆国憲法第二条では、その限界がはっきりと定義されていない。つまり、行政命令や大統領令を通して一方的に行動する大統領の権限について、憲法はほとんど何も言及していない( 27)。くわえて、大統領の権限はここ一世紀のあいだにさらに拡大してきた。
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@2838
ワシントンは、初代大統領としての自分の仕事によって、将来的に行政の権限の範囲が決まることになるとわかっていた──「私は人跡未踏の地を歩いている。私の行動のほとんどが、おそらく将来的に前例として引き合いに出されるにちがいない(
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@2957
少数派を多数派の権力から護ることを目的として作られた組織である上院は、当初から慎重な議論を進める場として重んじられてきた(議会の創設者たちは、下院が多数派を代表するものだと考えていた)。
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@3046
次の選挙によって新しい大統領が誕生するまえに、退任間近の大統領が最高裁判所の空席を埋めようとしたことが七四回あった。
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@3221
アメリカの民主主義の規範は、排除を背景として生まれたのだった。政界の住人がおもに白人に限られていた時代、民主党と共和党には多くの共通点があった。
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@3484
コラムニストのアン・コールター
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@3662
二〇〇七年から二〇一二年の六年のあいだに使われたフィリバスターの数は三八五回に上った。これは、第一次世界大戦からレーガン政権の終わりまでの七〇年間に使われたフィリバスターの合計数に匹敵する(
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@3729
土壇場での合意によって債務不履行こそ回避されたものの、すでにかなりの被害が生じていた。市場は大きく反応し、スタンダード&プアーズは史上はじめてアメリカの信用格付けを引き下げた。
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@3732
共和党上院議員がイラン政府に公開書簡を送り、オバマ大統領には核開発計画について交渉する権限がないと伝えた。
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@3766
相互的寛容と自制心という基本的な規範の衰退の裏には、党派の激しい二極化という現象が必ず潜んでいる。
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@3779
民主党か共和党のどちらかの支持者になるという選択は、たんにその党の応援者になるということだけでなく、いまではアイデンティティーの一部とみなされるようになった( 117)。
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@3835
民主党の左への移行に比べて、共和党の右への移行がより極端なのはなぜか?
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@3848
米国国勢調査局は二〇四四年までに人口の半分以上が非白人になると予測している(
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@3861
中絶への反対、学校での祈禱の推進、同性婚への反対( 136)。一九六〇年代には民主党を支持していた白人の福音派キリスト教徒たちも、徐々に共和党支持へと流れていった。
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@3874
言い換えれば、二大政党はいまでは「人種」と「宗教」によって区別されているということだ。
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@3882
民主党の支持者に比べて、共和党の支持者は党寄りの報道機関をより強く信頼する傾向がある(
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@3926
集団の社会的立場、アイデンティティー、所属意識が存亡にかかわる脅威にさらされたとき、「ステータス不安」という現象が起こりやすいことを解説した。この現象に陥ると、「過度に興奮し、疑い深く、攻撃的で、大げさで、終末論的な( 156)」政治スタイルが生まれる傾向がある
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@3938
もし「真のアメリカ人」の定義が「英語を母語とする国内生まれの白人キリスト教徒」に限られる場合、なぜ「真のアメリカ人」が自分たちの地位が危ういと考えているのかを理解するのはむずかしいことではない(
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@3944
共和党支持者が「アメリカが消えていく」感覚を抱いているという事実を理解すれば、なぜ彼らが「われわれの国を取り戻せ(Take Our Country Back)( 161)」「アメリカを再び偉大にしよう(Make America Great Again)」といったスローガンに惹かれるのかもよりはっきりわかってくる。
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@4063
トランプは結局、コミーの次のFBI長官に自身の信奉者を据えることに失敗した。その背景には、上院の有力な共和党議員たちによる拒否があった( 23)。同じように上院共和党は、セッションズ司法長官を交代させようとするトランプの動きにも抵抗した( 24)。
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@4137
有効な運転免許証や政府発行の写真付き身分証明書の提示を投票所で求めるというルールを定めれば、少数民族の有権者の投票率は下がると考えられた( 39)。  このような投票者ID法の制定は、アメリカで不正投票が広まっているという偽りの主張にもとづいて推し進められた( 40)。信頼できる研究のすべてにおいて、アメリカにおける不正投票のレベルは低いという結果が出ている(
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@4162
有効な運転免許証を所持していない人の割合はアフリカ系アメリカ人で三七パーセント、ラテン系アメリカ人で二七パーセントに上ったが、白人ではその割合が一六パーセントに下がった(
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@4165
アメリカ国民の一一パーセント(二一〇〇万人の有権者) が政府発行の写真付きIDを持っていないことがわかったが、アフリカ系アメリカ人に限定するとその割合は二五パーセントに増えた( 49)。
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@4328
安全保障を脅かすような出来事が起きれば、それが支持率の上昇につながることもある。  これこそ、トランプ大統領がアメリカの民主主義に危害を加えるリスクを形作る最後の要因である─
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@4354
直近一二人の大統領のうち六人の任期中に地上戦や大規模なテロ攻撃などが起きた。しかし、トランプ大統領の外交政策の愚かさを考えると、そのリスクはさらに高くなる( 79)。
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@4438
二〇一二年の大統領選前に行なわれた世論調査では、メキシコ人有権者の七一パーセントが選挙においてなんらかの不正があると信じていることがわかった( 93)。
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@4470
政治評価サイトのポリティファクトは、トランプの公の声明の六九パーセントを誤りまたは噓だと分類した──「ほぼ誤り」(二一%)、「誤り」(三三%)、「真っ赤な噓」(一五%)。「真実」または「ほぼ真実」と認定されたのは一七パーセントだけだった( 99)。
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@4500
独立した報道機関は民主主義制度の砦であり、それなしで民主主義が生き延びることはできない。
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@4535
不文律がたびたび破られるとき、社会は「〝逸脱〟の定義の基準を下げる」傾向があるという。そのとき、かつて異常とみなされたものは正常に変わる。
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@4648
アメリカはもはや民主主義のお手本ではなくなった。メディアを攻撃し、対立相手を逮捕すると脅し、選挙の結果を受け容れないとまで言い出す人物が大統領を務める国が、民主主義をしっかり護ることなどできるはずがない。
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@4689
ある社会のなかで規模を減らしつつある多数民族が、闘いを経ることなく支配的な地位をほかのグループに明け渡した実例はほとんどない。
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@4783
党の〝ライバル〟が〝敵〟になったとき、政治の競争は戦争に成り代わり、制度は武器に変わる。
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@4861
著者としては、民主党が「共和党のように闘うべきである」というのは誤った考え方だと主張したい。まず、世界のほかの国々の出来事を見るかぎり、そのような戦略は往々にして、独裁者にいいように利用されて終わるのがオチだ。
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@4898
民主党が強硬な戦術を用いてトランプ大統領を弱体化、もしくは辞任させることに成功したとしても、それは 割に合わない 勝利となる。なぜなら、彼らが引き継ぐことになるのは、残り少ないガードレールさえもが根こそぎにされた民主主義だからだ。
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@4914
民主主義において、公の抗議運動は基本的な権利であり、大きな意味をもつ活動である。しかしその目的は、権利や制度を壊すことではなく、むしろ護ることであるべきだ。
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@4965
アメリカの驚くべき二極化は、トランプ政権の誕生前から起きていたことであり、トランプ政権後も続く可能性がきわめて高い。
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@5042
規模が縮小しつつある白人キリスト教徒の支持層への依存をやめるべきだ。そして、白人至上主義に訴えることなく選挙に勝つ方法を見つけなければいけない。
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@5098
アメリカ中西部から東部の〝ラストベルト〟(さびついた工業地帯) やアパラチア地域などにひっそりと住む白人ブルーカラー層の支持をもう一度取り戻さなければいけないと情熱的に訴えてきた( 73)。  それを実現するために、移民の囲い込みや〝アイデンティティー政治〟(民族の多様性や、近年のブラック・ライブズ・マターに代表される警察官の暴力に対する抵抗運動などを包括的に意味する広義の言葉) から民主党は距離を置く必要があると主張する声も多い。
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@5115
ひどい考えだ、と私たち著者は声を大にして言いたい。わざわざ強調するまでもないものの、党に対する少数派グループの影響力を減らそうとすることは、二極化を改善するための誤った方法でしかない。
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@5122
政治学者ダニエル・アレンは次のように主張する。    単純な事実として、これまで世界で完全なる多民族民主主義が生まれたことはない。特定の民族が多数を占めるのではなく、すべての集団に対して政治的、社会的、経済的な平等が与えられた多民族民主主義はまだ存在しない( 75)。  これはアメリカにとって非常に大きな挑戦だ。
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@5146
アメリカでは歴史的に人種と貧困の問題が重なり合ってきたため、これらの制度そのものが一部の人種への非難につながることもある。
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@5152
対照的に、厳格な資力調査ではなく、北欧で一般的な「普遍主義的モデル」に重きを置いた保障政策には、アメリカ社会の緊張を和らげる効果があるかもしれない( 80)。アメリカの社会保障制度(Social Security)〔失業保険、老齢年金、遺族年金などの制度の総称〕 やメディケア〔高齢者や障害者を対象とした公的医療保険〕 などの全員が平等に恩恵を受けられる福祉政策は、社会の不満を緩和し、アメリカ国内のさまざまな層の有権者のあいだの溝を埋めることができる。
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