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Author:村上世彰

Title:生涯投資家 (文春e-book)

Date:金曜日 2月 1, 2019, 62 highlights

@170
日本の上場企業には、使うあてのないお金がたくさん蓄えられていた。この「遊休資産」を活用していくことが、企業の価値向上につながるという意味で、株主としてのコーポレート・ガバナンスの重要な課題であり、自分のライフワークとなっていった。
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@193
時代遅れの投資家なのだということもひしひしと感じる。二〇〇〇年代に入ってからITブームが来て、有形資産をもたないIT企業の株価が「成長性」をもとに高く評価されているが、私には理解できない世界だ。「売上が毎年倍になっていって」とか、「今は赤字だけど、十年後には一千億円の利益を出します」という事業計画を、精査するスキルが私にはない。
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@197
私の投資は徹底したバリュー投資であり、保有している資産に比して時価総額が低い企業に投資する、という極めてシンプルなものだ。このような会社は、経営に問題を抱えていることが多々ある。その問題を株主の立場から働きかけて改善しようとすると、「ハゲタカファンド」と批判されてしまう。
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@205
資本主義のルールを守らなければ国の経済はよくならないし、経営のルールであるコーポレート・ガバナンスを守らなければ企業は存続する意味がない。しかし日本の社会では、違う実態がうごめいていた。そこを私は正し、日本の社会を変えたかった。
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@221
思い通りに株主を選んだり、経営者が好き勝手を行なうことはできなくなる。上場とは、私企業が「公器」になることなのだ。  しかし日本では、そもそも上場とは何か、企業は何のために上場するのか、正確に理解している人が少ないように思う。
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@227
大学を出て会社に就職し、同じ会社で働き続けてトップの地位に就いた経営者の、「株主にいろいろと口を出されたくない」というような言い分も、全く理解できないわけではない。彼らにとって株主は「外部者」と映っているのだろう。しかし、上場企業である限り、外国人投資家や年金による株式の保有残高が日本の株式市場の半分を超えた今、世界の中で日本だけがコーポレート・ガバナンスというルールに反した行動をとることはできない。
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@233
企業とその経営者にとって、上場には二つのメリットがある。ひとつは、株式の流動性が上がること。すなわち、株式が換金しやすくなることだ。もうひとつは、資金調達がしやすくなることだ。逆に言えば、この二つが必要ない場合には上場する必要もない、
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@241
企業が資金を調達する方法は、①株式を新規発行することによる直接金融、②銀行からの借入などの間接金融の二通りだ。ところが実際に上場している企業を調べると、直接金融である株式の新規発行による資金調達を過去数十年も行なっていない企業がたくさんある。
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@246
IR(投資家向け広報) など必要な部署とその人材の確保、株主総会を招集するための通知を発送するコストや監査のコストなど、少なくとも年間五千万円、多ければ数億円から数十億円レベルの費用がかかる。直接のコスト以外にも、上場していることに伴う業務は多く、見えないコストもかさむ。そして、デメリットの第二には、いつ誰が自社の株主になるかわからない点が挙げられる。  こうした点を考えると、株式発行による直接金融で資金を調達する必要のない企業は、上場を廃止して非上場になることを検討すべきだと思う。
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@262
上場していることによる信用力がなくなるのではないか」とか、「取引先との関係が維持できない」などの理由で断わられてきた。
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@266
上場企業としか取引しない」といった商慣習が存在したり、上場企業の社員なら住宅ローンや賃貸契約の審査に通りやすい、などの社会背景があるのは事実だろう。
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@283
短期的には赤字の文化事業にも投資を続けられる。採算を度外視した経営は、上場したままなら許されない。CCCのMBOは、大成功だったと言えるだろう。
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@309
特段のポリシーもないまま、過去からの経営方針を「なんとなく」引き継いでいる企業がほとんどだということ。毎年安定配当をするという配当政策もそうだし、借入も「できるだけしないように、と昔から言われてきたから」といった慣習のようなもので、なぜ現在そうしているのかをその時々の経営者が考えて選んでいる施策ではない、
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@317
経営者の多くは、このように会社の財務数値や事業計画について明確な方針やポリシーを持っていなかった。しかしみなさん一様に穏やかで教養があり、コミュニケーション能力に優れ、人心掌握に長けていた。大きな企業の役員になるということは、業務執行能力の高さだけでなく、社内の昇進競争を勝ち抜きながら人望を集め、社長によって役員に任命されることを意味している。日本では今でも、今の社長が次の社長を選ぶ、すなわち経営者が次の経営者を指名するのが一般的だ。こんな慣習の下では、役員の方々の素晴らしい能力が、彼らに経営を委託している株主にではなく、自分を役員に選んでくれた社長の意向に沿うことにのみ費やされてしまう。私は非常に残念に思った。
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@338
た経営者が株主の利益を最大化するために経営をする、という考え方がある。経営者と株主の緊張関係があってこそ、健全な投資や企業の成長が担保できる
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@396
既得権益者から見れば裏切り者と思われてしまうが、日本もまた、官僚や上場企業の経営者といった既得権益を持つ人々と、コーポレート・ガバナンスという手法で戦わなければよくならない」
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@573
投資家と経営者では、必要な能力や資質が全く違うと思っている。投資家は、リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。経営者は、投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す。
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@762
売上すべてを返還していると、航海のたびに出資を募らなくてはいけない。そこで一六五七年から、継続的に事業を営むことを目的とし、売上ではなく利潤のみを株主に分配する方式に改めた。
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@776
日本の上場企業には、自社株も持たずに経営をしている取締役が多すぎる。そうした経営者にあるのは給与や賞与という安定的な収入のみで、株価に連動するリスクとリターンがない。だから彼らは株価を気にせず保守的な経営に走り、退職金や賞与の形でいかに自分たちが利益を享受するか、に主眼を置いてしまう。
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@863
余剰資金を貯め込むのではなく、より高い利益を求めて積極的に投資に回すか、投資の機会がないのなら投資家に還元すべきなのだ。投資家は経営陣に対して、銀行預金で僅かな金利収入を得ることを求めていない。
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@867
企業が投資された資金を効率的に使えない状況なら、積極的に投資家に戻す。投資家はその資金を、成長のために資金を必要としている別の企業へ投資する。そうやってお金が世の中を循環し、経済が回って行くのだ。
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@871
日本には上場企業だけで三百兆円を優に超える内部留保がある。そのうち半分が現預金だ。普段から資金を手元に積み上げておかなくても、必要になった時に市場から調達できるのは上場企業の大きなメリットだし、そもそもそのための上場であるはずだ。
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@874
業績を拡大していくこともせず、株主に還元することもせず、手元に過剰に貯め込んで執着している経営者こそ、将来的かつ長期的な企業の成長を望んでいない張本人である。自分が会社にいるあと数年の間だけ、事業環境が悪化しても潰れずに生き残ることにだけ重きを置いているように見える。やはり「守銭奴」と呼ばざるを得ない。
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@886
株を多く持っているAさんがどのように投票しようと、Bさんが自分の票をすべて候補者④に投じれば、候補者④は必ず取締役に選任されることになる。つまり累積投票制度を使うと、少数株主でも取締役を送り込むことができるのだ。
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@890
累積投票制度は日本でも会社法三百四十二条で規定されており、株主総会の五日前までに、株主が株式会社に対して請求すれば可能になる。しかし実際は、定款で累積投票制度を導入しないと規定している会社がほとんどだ。
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@894
アメリカでは、五%ほどの株を取得すればほぼ確実に取締役を送り込むことができ、上場している企業の側は、株主から提案された取締役を受け入れる覚悟がなくてはならない。ところが日本では、どれだけ多くの株を取得しても、会社の了解を得ずに株を取得した株主であれば、取締役を送り込めることは稀だ。
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@1373
フジテレビの株式の価値がまったく反映されていないニッポン放送の時価総額が、そもそもおかしい。加えて、フジテレビという魅力的な会社のコントロールを規模の小さな親会社が握っていることもおかしい。外国人投資家は早くからその「おかしさ」に目をつけ、遠からず修正されることを見込んで、ニッポン放送の株式を買っていた。一方で放送事業には、外国人の持ち分が二〇%を超えることができないという独特の規制がある。
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@1439
ニッポン放送の時価総額は一千四百億円前後で推移していた。保有資産と比較して圧倒的に低い市場評価だが、含み益はその当時、財務諸表には載っていなかった。最大の資産であるフジテレビの株式も四十億円前後と思われる簿価で計上されており、二〇〇一年三月末時点でのニッポン放送の総資産は、五百億円を下回っている。しかし実際は、フジテレビの株式だけで三千億円近くあった。
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@1443
サンケイビルも大手町を筆頭として超一等地に不動産を多く所有していたのに、時価総額は保有する資産の半額以下だった。
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@1544
MSCBという資金調達の手法は、引き受ける側(この場合はリーマンブラザーズ) は損をしない仕組みになっている一方、発行した側の株主利益が毀損される仕組みで、問題の多い方法だ。ライブドアがそんなやり方を使って八百億円もの資金調達を実現するなど、私は夢にも思っていなかった。
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@1558
ニッポン放送は、保有するフジテレビ株式をSBIに五年間の貸株とすることで合意。これはクラウンジュエルまたは焦土作戦と呼ばれる手法で、敵対的買収を仕掛けられた企業が、自身の保有する重要な財産や事業を第三者や子会社に売却することで、買収者の戦意を削ぐ防衛策だ。自社の株主とその利益を全く無視し、ただ保身のみを考えた行為だと言える。
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@1578
一審では、裁判官から、 「『ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前』と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」  と、すべてのファンドの運営を否定するような言及までなされた。
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@1588
ニッポン放送の案件は、日本の上場企業の「あるべきでない姿」を集約していたと言える。ライブドアの登場により、世間では「新興企業のテレビ局乗っ取り」という側面のみが強調されてしまった。そこに至る過程に存在していた上場企業の「あるべきでない姿」について、ほとんど議論されることなく終わってしまったことが悲しい。
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@1598
堀江氏まで「株を一定数買い進めた=悪者」として扱われていた。繰り返しになるが、もう一度強調しておきたい。上場している会社の株式は、誰でも売買できる。上場企業はそのリスクとコストを踏まえた上で、それでも必要がある場合のみ、上場を維持するべきだ。「
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@1611
鉄道事業は、基本的に赤字にならない仕組みだ。鉄道事業法・鉄道営業法という法律の下、必ず利益が出る運賃設定になっている。同時に公共性の高い事業ゆえ、利用者を保護する目的で、事業にかかるコストを無制限に運賃に転嫁できない決まりもある。
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@1615
要するに鉄道事業は、よほどおかしな設備投資や経費の計上を行なわない限り、必ず利益を生み出す。ただし生み出せる利益の範囲は限られている、ということだ。鉄道会社はこうした特殊なコア事業を運営しつつ、多くの駅や線路の周辺に所有してきた広大な土地を利用して、不動産事業を軸に、デパートやホテル事業も展開している。どの鉄道会社も、収益の内訳を見ると、鉄道事業の割合は次第に低くなっていることがわかる。
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@1619
私は、鉄道事業は公共性の高さ、事業を取り巻く規制や収益構造の特殊さゆえ、それ以外の事業と切り離されるべきだと思っている。
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@1625
JR、市営地下鉄、阪急、京阪、近鉄、南海、阪神がある。それぞれ別々の経営で、別々の路線を運行している。かつては、乗り換える際にいちいち切符を買い替える手間が必要だった。いまはスイカやパスモなどの磁気カードが普及して、改札の通過こそ楽になったが、運賃は別々に取られるし、乗り換えは不便だ。鉄道事業全体が、利用者目線になっていないのだ。
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@1649
私たちの試算では、株価下落後の時価総額が一千五百億円程度だったのに対して、一兆円を優に超える価値があると見込まれた。八千億円を超える有利子負債を抱える一方で、保有する不動産は、都内のプリンスホテルだけで品川、高輪と新高輪、赤坂、芝、六本木などの好立地にあり、軽井沢や鎌倉、ハワイなどのリゾート地にも多くの不動産を有していた。不動産だけで、その価値は一・五兆円ほどあったと思われる。
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@1759
五%の大量保有報告の提出によって「村上ファンドが買っている」と世間に知れると、多くの人がその株を買いに走り、途端に株価が吊り上がってしまう。私たちは投資のコストを可能な限り低く抑えるため、五%を超えてから大量保有報告を提出する期限までの短い間にどうやって多くの株を集めるか、工夫しなければならなかった。
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@1911
日本企業のPBRは平均で一なのに、アメリカ企業のPBRは平均三なのだ。日本の株式市場は五百兆円しかないのに、アメリカには二〇〇〇兆円ある。
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@1914
コーポレート・ガバナンスが徹底され、経営者が株主を向いた経営を行ない、株価が高く維持されている上場企業では、よほどシナジー効果の見込める理由がない限り、乗っ取りや敵対的買収は起きない。上場企業が買収されることをリスクと考えるのなら、買収防衛策や持ち合いといった保身的な意味での対策を取るのではなく、コーポレート・ガバナンスを徹底し、企業価値の向上に注力することだ。それこそが、買収されるリスクを下げる有効な手段だ。株価の高い企業は乗っ取られない。それは世界の常識だ。
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@1955
そもそもITバブルとは、日本のバブル崩壊や一九九七年のアジア通貨危機によって余っていた資金が、注目を集め始めていたコンピューターやインターネットの分野に流れることで始まったと言われている。
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@1975
Amazonは、上場後六年間も赤字決算を続けた。一方で売上は上場後の急成長以降も、年率三〇%前後というスピードで成長していたから、大きな投資によって、事業が目覚ましく成長していたことは間違いない。生み出した利益を次なる投資へと遠慮なく回すため、最終的な利益は赤字、もしくは売上に比べるとかなり小さいものとなるのだ。
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@2152
楽天の創設者・三木谷浩史氏の主眼は、常にM&Aに置かれているように見える。日本興業銀行のM&A部隊出身という経歴と人脈をフルに活用し、積極的なM&Aで楽天を大きく成長させてきた。
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@2263
将来この国は、どうなっていくのだろうか。GDPは、もう四半世紀伸びていない。成長なきところに、投資は起きない。
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@2304
一九六〇年代から一九七〇年代にかけて、日本は高度成長の波に乗りながら、少ない資金でいかに外国資本に対抗していくかということが国家目標となっていた。外国資本の進出に対する防衛策としての安定株主づくりも進められる中、キャッシュフローが生まれるようになった企業と銀行は、お互いに株式を発行して引き受け合うような増資を繰り返した。銀行が企業の株主でありながら貸し付けも行なう、アメリカなら利益相反として厳しく規制されるような状態になった。
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@2364
金融機関が経営を監視するデットガバナンスにおいては、急激に利益を上げて借入金を繰り上げ返済するような企業は歓迎されない。調達した資金をローリスクな使途に用い、長期にわたって金利を支払い、一定の利益を安定的に生み続ける企業が好まれる。さらに、日本は「総会屋」と呼ばれる輩に会社を乗っ取られる恐怖や対策に追われる経験をしたせいか、「投資家」全般に対してマイナスのイメージが強く残っているように感じる。
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@2423
上場株式を誰が持っているのかを見てみたい。日本では、外国人投資家三〇%、事業法人二〇%、個人二〇%、信託銀行二〇%、生保・損保五%、都銀・地銀五%という比率になっている。アメリカは数年前のデータとなるが、個人と投資信託で五五%、年金十五%、外国人投資家十五%、ヘッジファンド五%、その他一〇%となる。個人に属すると推測できる分を比較すると、日本が個人+投資信託で二〇%強なのに対して、アメリカは個人+投資信託で五〇%を超えている。
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@2490
グリーンメーラーとは、ターゲットに決めた企業の株を大量に買い集めておいて高値での買い取りを求める、敵対的な買収者を指す。経営への不当な介入や経営陣が望まない相手への株の転売をほのめかすなど、脅迫まがいの手を使うこともある、悪質な投資家だ。
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@2544
アメリカの企業では、手元に積み上がってきた資金や投資された資金は、M&Aを含めた事業投資を行なうなど、企業価値を向上させるために積極的に使われる。使い道がなければ株主に還元し、また必要になったら市場から調達する、という流れが当たり前にできている。「手元に残さない」経営だ。
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@2603
株式会社日本のバランスシートは、だいたい次の図のようになっていると考える。当期利益は、毎年三十~三十五兆円程度、自己資本比率は五〇%弱、ROEは市場の加重平均を採用し、六~七%とする。
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@2640
企業の無借金経営は、倒産のリスクを避けられるし、金融機関の干渉も受けないから望ましい、などという考えはとんでもない間違いだ。資金循環を滞らせると同時に、負債活用度の数値を下げることになり、ROEを低くしてしまう要因となる。
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@2677
経営陣にとって、会社の業績と自分の給与が連動していない、業績に直結して解雇される事態にならない、したがって株価を上げるインセンティブがない、という日本の企業風土が原因
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@2683
GPIF) を合わせた公的マネーは約四十兆円。東証一部上場企業の約半数で五%超の大株主となっており、上場企業全体の四社に一社では事実上の筆頭株主となっている。日本株全体に占める比率は、八%ほどに達して
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@2686
株式会社日本の筆頭株主は実質、日本国なのだ。このように公的機関が実質的な筆頭株主になる事例は、アメリカではほとんどなく、ヨーロッパでも数%程度にとどまると言われている。
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@2689
公的機関が筆頭株主というのは、政府による民間企業への介入がたやすくなる危険性もあるから、好ましい状態とは思わない。しかしこんな状況になってしまった以上は、むしろ奇貨として、日銀および年金には「スーパーアクティビスト」になってもらいたい。
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@2781
寄付の文化が根付いているアメリカでは、非営利団体の資金調達にコストがかかることは常識だが、日本では違う。集まった資金の一部を広報活動に充てるだけでも、寄付者の理解がなかなか得られない。
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@2809
アメリカでは、ガバナンスの前提として、上場企業にとってのIRとでもいうべきDR(Donor Relation) に力を入れている非営利団体が多い。
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@2875
すぐに換金可能かどうかなどの細かい議論は置いて、端的に言えば日本にはまだまだお金がある。政府にも個人の世帯を見ても、お金はあるのだ。それなのに世界一の借金大国になっている。なぜなのか。私の答えは簡単だ。「お金が循環していないから」という理由に尽きる。
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@2932
私は裁判で、「誰かがどこかの会社の株を五%以上買いたいと言っているのを聞いたら、その誰かの経済状況や実現可能性に関わらず、インサイダー情報とみなされるのか?」という点を争った。
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@3079
私は、非営利団体への支援も投資だと考えている。リターンとして受け取るものが、金銭なのか、最終受益者の笑顔や「ありがとう」の言葉なのか、または社会環境の改善なのか、という形が異なるだけだ。
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