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Author:サイモン・シン、エツァート・エルンスト、青木薫

Title:代替医療解剖(新潮文庫)

Date:火曜日 12月 18, 2018, 100 highlights

@46
科学と意見という、二つのものがある。   前者は知識を生み、後者は無知を生む。
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@62
多くの国々で、人口の半数以上がなんらかの代替医療を利用している。
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@195
今日、理髪店の看板になっている赤白の 縞 がらせん状に回転する筒は、床屋がかつて外科医の役割を果たしていたなごりだと言われることが多いが、実はこの看板は、床屋が瀉血を 担っていたことと関係がある。赤は血液を、白は止血のための包帯を、円柱のてっぺんにある球は 真鍮 製のヒル 盥 を、そして円筒それ自体は、血流を増やすために患者に握らせた棒を象徴しているのである。
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@254
身長一九〇センチメートルの大男だったジョージ・ワシントンは、一日と 経たないうちに血液の半分を失った。ワシントンの治療に当たった医師たちは、患者の生命を救うためには、それが最後の手段だったと主張し、仲間の医師たちも彼らの判断を支持した。
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@357
論理と合理性を武器として、壊血病という災いに立ち向かったのである。ジェイムズ・リンドは、世界ではじめて《対照比較試験》と呼べるものを行うことにより、他の人たちがなし遂げえなかった成功を収めたのである。
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@415
軍事行動によって命を落としたイギリスの水兵は千五百十二名だったのに対し、壊血病で死んだ者は十万人にのぼった。
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@510
試験を行わずにすませようとすれば、医療はいつまでたっても、効果がなかったり、危険だったりする未検証の治療法の寄せ集めにとどまらざるをえないと論じ、科学的根拠なしに行われる医療行為はすべて、「われわれ人間の生命に対する、たえまない実験の連続である」と述べた。
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@545
は、《科学的根拠にもとづく医療》というアプローチを、冷たくて難しげで 威嚇 的 だと感じるようである。もしもあなたが多少ともそう感じているなら、《臨床試験》と《科学的根拠にもとづく医療》が登場する以前の世界が、どのようなものだったかを思い出してみよう。医師たちは、何百万人という人びとの血を流させることでどれほどの害をなしているかに
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@582
フローレンス・ナイチンゲールは、無名といってよい女性だったが、反論の余地のない、信頼性の高いデータで武装することにより、男性優位だった医療界の主流派を相手取った論戦で、からくも勝利することができた。
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@931
計画には鍼だけでなく、薬草を用いる漢方や、その他の伝統療法も含まれていた。毛沢東の動機は、ひとつにはイデオロギー的なものだった。中国の伝統医療を復活させることにより、国家としての誇りを高めようとしたのである。しかしそれだけでなく、彼は必要にも迫られていた。都会であれ農村地帯であれ、人民が手頃な料金で医療を受けられるようにするという公約を果たすためには、伝統的な医者、いわゆる「はだしの医者」のネットワークを生かすしかなかった。
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@1088
科学者たちは、鍼が鼻炎から歯肉炎、性交不能から赤痢まで、これほど多くの症状に効く理由はわからないと認めざるをえなかった。しかし鍼の鎮痛効果に関しては、いくつか信頼できそうな仮説があった。
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@1159
肘 の関節が動かなくなった女性を、トラクターを使って治療してみた。するとその女性は、治療のおかげで肘が少し動くようになったと言った。しかしよく観察すると、肘は相変わらず動いていないのだが、女性は肩と手首を大きく 捻っていたのだった。
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@1176
どういう要素がプラセボ効果を大きくするだろうかと考えてみた。そして彼は、医師の評判が高いこと、治療費が高いこと、治療法が目新しいことという三つの要素が、とくにプラセボ効果を高めると結論した。
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@1190
プラセボ効果は激烈な痛みさえも押え込む
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@1223
プラセボ効果が悪影響を及ぼす可能性もあることを忘れてはいけない。たとえば、プラセボ反応だけの効果で具合が良くなったかに感じている患者がいるとしよう。根本的な問題は何も変わっておらず、治療を続ける必要があるにもかかわらず、一時的に症状が改善した患者は、治療を受けようとはしなくなる可能性が高まる。
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@1250
搔かれることと注射とを強く結びつけるように条件付けされたモルモットは、皮膚を搔かれただけで、あたかも毒を注射されたかのような反応を示した
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@1252
もしも人間のプラセボ効果も条件付け反応なら、プラセボ効果が起こるのは、「患者は、医者に診察してもらったり薬を飲んだりすることを、病気が良くなることと結びつけているからだ」ということになる。
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@1276
患者に薬を投与するときは、錠剤よりも注射のほうがプラセボ効果は大きく、患者が薬を飲むときには、一錠よりも二錠のほうがプラセボ効果が大きい。さらに驚いたことに、不安を和らげるためには、錠剤が緑色のときにプラセボ効果は最大になり、抑鬱を改善するためには、錠剤が黄色いときに最大になる。また、錠剤をもらう相手は、白衣を着た医師のときにプラセボ効果は最大になり、Tシャツを着た医師からもらうとこの効果は小さくなり、看護師からもらえばいっそう小さくなる。大きな錠剤は小さな錠剤よりもプラセボ効果が大きい──ただし、非常に小さい錠剤はそのかぎりではない。また、予想されるように、高級感のある箱に入った錠剤のほうが、質素な箱に入った錠剤よりもプラセボ効果が大きいことがわかっている。
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@1343
一般に、詳細に観察されると、観察される人物の健康状態や成績に良い変化が起こることがわかっているから
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@1491
最終的にその研究者は、第一の臨床試験で得られた肯定的な結果だけを発表し、第二の臨床試験で得られた否定的な結果は引き出しにしまい込んでしまう。これが発表バイアスである。
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@1499
WHOは、これまで通常医療に関しては立派な取り組みをしてきたが、こと代替医療に関するかぎりは、真実よりも政治的公正を重んじているようにみえる。その背景として、まず第一に、鍼を批判すれば、中国や、古代の 叡智 や、東洋の文化全般を批判したと受け取られかねないという事情がある。
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@1547
とうとう私はたまらなくなってベッドに腰を下ろすと、両腕でその男を抱きしめた。そのとたん、叫び声がぴたりと 止んだ。それから数時間ほどして、彼は私の腕のなかで静かに息をひきとった。彼が泣き叫んでいたのは胸膜炎のせいではなく、孤独のせいだったのである。私はこのとき、死にゆく人の看護について、かけがえのない勉強をさせてもらった。
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@1672
残念ながら、 完璧 な鍼の臨床試験を行うことはけっしてできないだろう。なぜなら、理想的な臨床試験は、二重盲検でなければならないからだ。つまり、治療を受ける患者も、治療を行う鍼治療師も、その治療が本物なのか偽物なのかを知らないという状況を作らなければならない
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@1783
薬の効能を大げさに言い立てる者が、人を 騙そうとしてやっていることはまずめったにない。そういう大げさな言葉は、思いやりあふれる共謀の結果として、よかれと思う気持ちとともに出てくるのが常である。患者はよくなりたいし、医者は患者を治したいし、製薬会社は医師の力になって患者の役に立ちたいのだ。対照比較試験は、そうした〝よかれと思う心〟の共謀に取り込まれないための試みなのである。
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@1938
極端に希釈された溶液には、はじめの母液に含まれていた分子は一個も含まれていないと考えられるのである。実際、 30 Cレメディに有効成分の分子が一個含まれている確率は、十億分の一の十億分の一の十億分の一の十億分の一の十億分の一である。換言すれば、 30 Cホメオパシー・レメディは、ほぼ確実にただの水だということになる。
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@2088
医療の歴史を調べている人たちは、当時、通常医療を受けるぐらいなら、いっそ何もしないほうが患者にとっては良かったのではないかと考えているほどだ。意外に思われるかもしれないが、一八五〇年代の医療は、いわゆる《英雄的治療》の段階にあり、医師たちは患者の役に立つよりもむしろ、患者に害をなしていた可能性が高いのである。
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@2535
たしかに動物は、自分がどんな治療を受けているのか、どんな反応が起こることを期待されているのかなどはわかっていないが、その動物をモニターしている人間はそれを十分理解しているという事実が残る。換言すれば、動物はきちんと「目隠し」されているが、人間のほうは「目隠し」されていない
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@2544
逸話をどれほどたくさん集めても、しっかりした科学的根拠にはならないということだ。科学者がよく言うように、「逸話の複数形はデータではない」のである。
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@2803
た。「それはちょうど、チーズだけを食べさせれば子どもの身長が伸びるという仮説を立て、子どもたち全員にチーズばかり食べさせて、一年後に身長を測ってこう言うようなものだ。『ほらごらん! 全員の身長が伸びたではないか、チーズが効く証拠だ!』」
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@2851
金銭的なことを言えば、一羽のフランス産カモは、この惑星上でもっとも貴重な動物といえよう。なにしろ一羽のカモから取り出された心臓と肝臓は、二千万ドル以上の売り上げが見込まれるインフルエンザ・レメディの 唯一 の「有効成分」になるからだ。(
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@3000
一九五〇年代の医師たちは、むしろ自分の目で見たことを信じるほうを選び、「私の経験では」というセリフをおまじないのように唱えながら患者の治療に当たるのが常だった。
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@3035
脊椎マニピュレーションを受けると、「コキッ」という音が出ることがあるが、あれは骨と骨がぶつかり合って立てる音ではなく、骨が正しい位置に戻ったという証拠でもない。あの音は、関節内を満たしている液体が強く圧迫されたせいで気泡を生じ、その気泡が解放されてはじけるときの音なのである。
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@3078
重要なのは「脊椎マニピュレーションは効くのか?」という問いではなく、「脊椎マニピュレーションは、他の治療法よりも効くのか?」という問いだからである。
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@3308
もしも脊椎が少しズレたぐらいで病気になるなら、腰痛をもつ人は他の病気にも苦しんでいていいはず
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@3428
平均すれば、私たちが一年間に 被曝 する放射線の十四パーセントは医療用X線によるものとみられる。
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@3442
わけても懸念されるのは、カイロプラクターは概して、脊椎全体にX線を照射しようとすることだ。これは、他のほとんどのX線による処置と比較して、かなり大きな線量を必要とする。
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@3530
椎骨動脈に損傷のある患者と、脳卒中の病歴のない対照群の患者とを比較した。その結果、年齢が四十五歳未満の若い患者で、それまでに動脈破裂を起こしたことのある者は、同年齢の健康な個人と比べて、損傷が認められるのに先立つ一週間以内にカイロプラクターにかかっていた率が五倍に達することが示された。つまり、カイロプラクティック治療を受けると、動脈損傷を受ける危険性が五倍になる可能性が示唆されたのである。
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@3615
二〇〇四年にトロントで行われた調査によれば、三十一パーセントの子どもたちがカイロプラクターの治療を受けている
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@3669
が、患者が鍼治療師にかかる前に考えるべき重大な有害反応が二つある。  ひとつめは、感染である。患者が肝炎などになったケースがいくつか詳しく報告されている。
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@3676
中国では針をアルコール溶液に保存しておく習慣があるためかもしれない。アルコール溶液に 浸けることは、肝炎ウイルスに対する予防措置としては不十分なのである。
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@3699
ホメオパシーには思いがけない危険な副作用がありうる。それは、どれかのレメディによって直接的に引き起こされる副作用ではなく、医師の代わりにホメオパスが医療についてアドバイスを与えることによる、いわば間接的な副作用である。
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@3713
ホメオパスの圧倒的多数は、予防接種を受けることは勧めないのである。
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@3765
結果は衝撃的だった。十名のホメオパスのうち七名までが、患者の病歴については何も尋ねず、虫刺され予防のための一般的なアドバイスもしなかったのである。さらに悪いことに、十名全員が、通常医療ではなく、ホメオパシーによる予防を行うようアドバイスした。タフが実際に旅行をするつもりだったとしたら、生命を危険にさらすことになっただろう。
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@3911
薬(drug)という言葉が、「乾燥した植物」を意味するスウェーデン語のdruugに由来する
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@4026
個別化されたハーブ薬は、偽薬または標準的なハーブ薬よりも良い成績を出すことができていない。したがって、個別化されたハーブ薬は勧められないと言わなければならない
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@4043
植物に 見出された強力な化学物質のなかには、人間の病気を治すために使えそうなものがある。しかし、そうした化学物質のほとんどは、まったく別の目的のために進化したものだということを思い出そう。たとえば、植物に含まれる化学物質のなかには、その植物を害虫から守るために進化したものもあるだろう。そうした天然の殺虫剤で虫を殺すことができるなら、もしも大量に投与されれば、人間にとっても有害になることは十分ありうることなのである。
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@4049
セントジョンズワートに関してとくに 懸念 されるのは、患者が服用しているほかの薬と干渉する恐れがあることだ。実際、セントジョンズワートは、抗HIV剤と抗ガン剤のいくつかを含む処方薬の半分以上に対して、効果を抑制する可能性がある。
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@4299
磁気療法は、数ある代替療法のなかでもとくに効果のない部類に属する。
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@4354
多くの代替医療に効き目がないことが示されても、思慮ある人たちがなぜ信じてしまうのか、その理由を探っていこう。
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@4468
自分のために家族が祈ってくれていることを知っている患者では、回復率がわずかに高いことを、科学者たちはすでに認めている。自分のために祈ってくれる人がいれば、患者は愛と希望を感じ、困難な時期を支えてもらっていると思うだろうから、回復率の高さは心理学的効果として容易に説明できる。したがって、家族の祈りを知っている患者に祈りが効くからといって、超常現象をもちだす必要はない。
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@4555
一番の問題は、二つの出来事が立て続けに起こると、私たちはその二つに関係があるはずだと思ってしまうことだ。ホメオパシーの錠剤を飲んで病気が良くなったのなら、ホメオパシーの錠剤のおかげで良くなったに決まっているではないか? 二つの出来事のあいだに相関があるなら、一方が他方の原因なのは常識ではないだろうか? だが、答えは「ノー」なのだ。
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@4588
多くの症状はいずれ自然に治り、 身体 はそのうち自力で回復する。原因のはっきりしない 腰痛 の場合、治療を受けていない患者の約九十パーセントは、六週間ほどで大幅に状態が改善する。したがって、ホメオパスが二カ月のあいだ患者を引き留めておくことができれば、いずれにせよ回復する見込みは高い。
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@4615
以上に述べたような偶然の一致が起こると、代替医療が効くものとはじめから信じている患者はいたく感銘を受けるだろう。というのも、信じる者は《確証バイアス》をもちやすいから
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@4620
確証バイアスは、トルストイによる次の言葉にちなみ「トルストイ・シンドローム」と呼ばれることがある。   自慢げに人に教えたことや、人生の 礎 としてきたことが、間違いだったと認めなければならないような事態になれば、たいがいの人は──難しい問題をやすやすと理解できる人まで含めて──明々白々たる事実さえ認められないものだ。
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@4635
代替医療がほぼプラセボ効果だけに頼っているとしても、代替療法のセラピストがプラセボ効果を利用して病気の人の力になってはいけない理由があるだろうか? プラセボ効果は、場合によっては非常に強力になる
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@4725
人は誰でも、自分の金を使いたいように使う権利があるとも言えるが、もしも代替療法のセラピストが、証明されていないことや否定されていること、あるいはひどく誇張のある主張をし、しかもその治療法が危険でさえあるとしたら、私たちは自らの健康を犠牲にして金を巻き上げられていることになる。
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@4788
ガン専門家マイケル・バウム教授は次のように述べた。「私の発言の重みは、四十年に及ぶ研究と、二十五年に及ぶガン研究への積極的な関与の上に築かれた知識の裏付けによるものである。あなたの権力と威信は、たまたまどんな家に生まれたかにかかっている」
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@4819
プラセボにもとづく代替医療は用いるべきではないと考える主な理由のひとつは、医師と患者との関係が、噓のない誠実なものであってほしいからである。
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@4826
医師がホメオパシーの薬を処方する決心をしたとすれば、プラセボ効果を引き出すためには患者に噓をつかなければならない。
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@4848
著者たちの立場は、厳格すぎると思う人もいるだろう。実際、われわれの立場に反対する人たちは、 象牙 の塔の住人が言いそうな倫理を振りかざした理屈よりも、噓をつくことで得られる受益性のほうが大きいと言う。
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@4853
もしも医師がホメオパシーのようなプラセボ効果に頼った薬を処方したら、医療はどういったものになるか考えてみよう。 1 医師はホメオパシーには中身がないことがバレないように共謀して口をつぐまなければならない。医師は誰ひとり、「王様は裸だ」と言うことを許されない。
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@4869
5 製薬会社は、自分たちも 偽 の薬剤を売り出してもいいはずだと強く言えるようになる。偽薬の砂糖粒を万能薬と称して売ればはるかに 儲かる商売になる
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@4874
プラセボ効果を引き出すために、偽薬を使う必要はないのである。
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@4885
神経科医のJ・N・ブラウは次のように述べた。「患者にプラセボ効果を及ぼすことのできない医師は、病理学者になるべきだ」
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@4953
大衆に代替療法を売り込むためにはセレブを利用するに限る
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@5034
今では世界中の大学がさまざまな代替医療で学位を授与しているが、それは大学が体現すべきもののすべてを傷つける行為である。いったいどうすれば、科学的にはまったく意味をなさない「気」や「ポテンタイゼーション」や「サブラクセーション」などという原理を大学で教えて、理学士の学位を授与できるというのだろうか?(この三つはそれぞれ、 鍼、ホメオパシー、カイロプラクティックの中心概念である)
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@5357
しかし患者のなかには、そんなふうに言われるとがっかりして、もっと治療らしいことをしてもらいたがって医師を困らせる人たちがいる。そんなとき、患者の気持ちをなだめ、プラセボ効果で症状を軽くしてくれそうなものを勧めておけば、医師としては都合がいいはずだ。その結果として、健康食品店や薬局に置いてあるハーブ薬やホメオパシー・レメディを使ってみてはどうですか、などと言ってしまうのだろう─
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@5388
世界中のどこで行われた調査でも、代替医療を使うきっかけの少なくとも一部は、通常医療への失望であることが示されている。
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@5400
一人ひとりの患者にもっと時間をかけなければならない。国によっては、平均の診療時間はわずか七分というところもある。一番時間をかけている国でも、平均十五分を確保することさえままならないありさまだ。
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@5403
代替療法のセラピストたちは、ひとりの患者に三十分もかける。なにしろその時間に対し、たいていは高額の料金を請求するのだから。
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@5423
カイロプラクティック協会は、脊椎マニピュレーションの有害反応を記録するための方法を、いまだに作ることができないでいる。
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@5463
二千四百年間にわたり、患者たちは、医者は自分のためになることをしてくれているものと信じていた。そのうち二千三百年間は、患者たちは間違っていた」。
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@5506
政府はなんらかの理由により、総売上何十億ドルにのぼる代替医療産業と対立するのを恐れているのかもしれない。あるいは、すでに代替医療を使っていて、お気に入りのハーブ・セラピストやホメオパスが店じまいに追い込まれでもすれば腹を立てるであろう、何百万という有権者の気分を害したくないのかもしれない。
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@5527
それらの病気にホメオパシーが「効く」とはどこにも書かれておらず、「もっともよく用いられる」とだけ書いてあることに注意しよう。
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@5648
根拠もないのに非常に魅力的なことを言う、鍼、霊気療法、心霊療法、指圧療法、その他の多くの代替療法の 施術 者 にも言える。  もしも通常医療の医師がそんな無責任なことを言い、効果の証明されていない、それどころか危険でさえある薬を患者に投与したりすれば、医師免許を 剝奪 されるか、裁判の被告席に座ることになるという点は特筆に値する。
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@5755
系統的レビューも行われ、魚油を毎日摂取すれば、平均して一年ほど寿命が延びることが示されている。
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@5764
興味深いのは、安全で有効であることが証明できる代替医療はなんであれ、実は代替医療ではなく、通常医療になるということだ。つまり、代替医療とは、検証を受けていないか、効果が証明されていないか、効果のないことが証明されているか、安全でないか、プラセボ効果だけに頼っているか、微々たる効果しかない治療法だということになりそうなので
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@5767
代替医療のセラピストたちはあいかわらず、勲章のように「代替」という言葉を冠し、不十分な治療法に不当な尊厳を与えるために利用している。彼らは「代替」を称することで、科学からこぼれ落ちている何かを拾い上げているというイメージをまとわせようとしている。しかし実を言えば、代替の科学というものは存在しない─
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@5770
代替生物学、代替解剖学、代替検証、代替科学的根拠が存在しないのと同じように。
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@5909
ヨガは、食事や瞑想をはじめ、ライフスタイル全般にかかわる運動療法だが、心血管系のリスクを低減するうえで効果があることが示されている。
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@5911
太極拳についても、すでにかなり詳しい調査が行われている。太極拳は身体のバランスを良くし、高齢者の転倒を防止し、心血管系の状態を向上させ、関節の柔軟性を高め、更年期以後の女性の 骨粗鬆症 を予防し、慢性心臓病の患者の生活の質を向上させる。とはいえ、代替医療の運動療法の効果が、一般的に行われているさまざまなエクササイズの効果を上まわるという有意の科学的根拠はない。
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@6008
臨床試験によって、アロマセラピーとマッサージにはリラックス効果があることが裏づけられている。しかしその効果は一時的なもので、治療としての価値については議論の余地がある。エッセンシャルオイルのなかには、たしかに特異的効果をもつものがありそうだ。たとえば、ティーツリーのオイルには抗菌性がある。しかし、通常医療で用いられる抗生物質とくらべて信頼性ははるかに低い。
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@6147
近年、催眠療法はいくつかの医療分野で認められるようになっている。催眠療法士は、疼痛、不安、依存症、恐怖症など、さまざまな慢性疾患の治療を行う。
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@6157
催眠療法と自律訓練法は比較的安全だが、重い心の病気をもつ人はこれを行ってはならない。催眠療法によって、抑圧された記憶、あるいは偽りの記憶を取り戻して問題が起こることもあり、虚偽記憶症候群(実際には起きていない悲惨な出来事を思い出してしまう)が報告されている。
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@6226
人智学医療では、惑星、金属、そして人間の臓器とのあいだに 形而上学的な関係があるものと仮定したうえで、その関係性にもとづいて治療方針を決める。病気は、前世の行いと関係があると信じられ、自らの罪を 贖うために、通常医療を受けることなく人生を生きぬくのが最善とされる。
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@6260
吸い玉療法で行われる一連の動作や、その視覚的側面(「魔法」のようにカップに吸い込まれていく皮膚など)は、平均を上まわるプラセボ反応を引き起こすようである。
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@6349
最近ガン患者の場合に個別化漢方薬の方法が試されたが、症状の緩和についてはプラセボを上まわる効果はないことが示された。
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@6353
伝統中国医学で用いられる個々の薬草(たとえば 甘草、 生姜、 銀杏)の一部に薬理学的効果があることは間違いない。
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@6459
近年では、家庭内の電磁波が健康へ及ぼす影響にどう対処すべきかをアドバイスする風水師が増えている。しかし、そのような電磁波が健康に悪影響を及ぼすという根拠はない。
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@6564
マインドフルネス・メディテーション」は、純粋に治療目的で発展した方法であり、宗教にかかわる問題は起こらない。
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@6569
いくつかの報告によれば、瞑想によって精神疾患が悪化する場合があるらしく、そうした問題をもつ患者は瞑想を行ってはならない。
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@6613
統合失調症や、重い鬱病の患者には、リラクセーションは症状を悪化させる恐れがある。
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@6788
日本でもあらゆるメディアを通じて、「天然植物成分100%」といった言葉が「安全」の同義語であるかのように使われている
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@6790
代替医療にまつわるこれら三つのキーワードには、私たちの思考を停止させる強力な魅力があるようにみえる。そうだとすれば、医療との関連でこれら三つのキーワードが出てきたら、むしろ実質を伴わないイメージ戦略ではないかと疑ってみたほう
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@6807
サイモン・シンが、英国カイロプラクティック協会に名誉毀損 で訴えられた一件である。二〇〇八年、本書の原書がイギリスで刊行されるのに合わせ、シンは『ガーディアン』紙のウェブ版のコラムで、子どもの腹痛や 喘息 などを治療できるとして、子どもに施術しているカイロプラクターがいると述べた。  英国カイロプラクティック協会はそれに対し、シンの書き振りは、まるで協会の指導部がそれと知りつつインチキ療法を許しているかのように読め、事実上、協会の指導部を不当にも非難するものだとして法廷に訴えたのである。  イギリスでは、こうした場合に名誉毀損で訴えられると、まず勝てないという状況があった。訴えられた科学者や医師やジャーナリストは、裁判のために多大な時間とエネルギーを取られるばかりか、その費用も負担しなければならない。それを逆手にとって、国際的な団体や企業などが、事実上の口封じとして名誉毀損に訴えるときには、わざわざイギリスを裁判地に選ぶという、「名誉毀損ツーリズム」という現象まで起こっており、国際問題にもなっていた。
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@6870
偽の治療を受けた被験者の4分の1ほどに、頭痛、吐き気、不眠、疲労感が見られることが知られており、これを「ノセボ効果」という。プラセボは、ラテン語で「私は喜ばせるであろう」という意味であるのに対し、ノセボは同じくラテン語で、「私は害をなすであろう」という意味である。
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@6884
偽の治療を受けたグループでは、測定された呼吸機能には改善が認められなかった。一方、被験者への聞き取り調査では、どちらのグループもまったく同じように、症状が改善したと報告したのである。つまり、患者の主観的な経験が、客観的な身体的測定器と食い違ったことになる。
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@6895
ドーパミンの放出に関係する遺伝子に、特定のタイプの変異を持つ人は、そうでない人と比べて、偽鍼による治療に反応しやすい
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@6902
プラセボ効果は、無意識のレベルでも起こる
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@6903
ほんの一瞬、特定の画像をスクリーンに映し出す。その時間はきわめて短いので意識的には認識できないが、もしも被験者がその画像を治療と結びつけるように準備されていれば、プラセボ反応が起こるというのである。
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