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Author:松原 隆彦

Title:宇宙に外側はあるか (光文社新書)

Date:日曜日 12月 9, 2018, 77 highlights

@190
光も電波も、秒速約 30 万キロメートルという猛スピードで真空中を突っ走ります。 30 万キロメートルといえば、これは地球7周半分の長さをまっすぐに伸ばした距離で、そんな長大な距離を1秒間で通り過ぎてしまうわけです。私たちの日常的な感覚では、このスピードは無限に速いとも思えるほど
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@208
遠くからやってくる光をいくら見ても、宇宙の始まりの瞬間を見ることはできません。なぜなら、宇宙を昔にさかのぼっていくと、光が物質に邪魔されて、まっすぐ進めない時代に到達してしまうから
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@211
光で見ることのできる過去は、光がまっすぐ進めるようになった後だけです。  それがいつのことかというと、宇宙が始まってから約 38 万年後、つまり宇宙が約 38 万歳だった頃のこと
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@215
この約 38 万歳の宇宙から直接やってくる光は、実際に観測されています。それが「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれるもの
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@240
38 万歳の頃に、宇宙全体に満ちた光として生まれました。もし私たちがその当時に行ってこの光を見ることができたなら、それは白熱電球のような黄色っぽい色に見えるはずだと計算されています。  でも、その小さかった宇宙は膨張して、現在までに大きさが約1100倍になります。すると、空間を伝わっている波の波長も、その膨張した割合と同じだけ引き伸ばされてしまいます。つまり波長も約1100倍になります。光は電磁波の一種であり、光の波長が1100倍になると、それは電波と呼ばれる種類の電磁波に変化します。このため、宇宙マイクロ波背景放射は電波として観測されるというわけ
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@248
宇宙の最初期では、宇宙の中にある物質の密度や温度が高く、物質はいわゆるプラズマの状態になっています。プラズマ状態とは、原子から電子が引きはがされた状態になっていることを言い
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@274
宇宙の晴れ上がり時に、宇宙全体の温度が摂氏約3000度だったことと関係してい
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@275
一定の温度を持つ物体からは、その温度に対応した電磁波が放射されます。鉄を熱すると赤く光りだしたりするのも、この原理です。冷えた鉄からも電磁波が放射されていますが、それは目に見えない赤外線です。熱することで、目に見える電磁波、つまり光が放射するようになり
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@464
あまり温度が高くなると、正しさの確立している物理学理論で記述できる領域を超えてしまい
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@465
そこでは、私たちにはまだ未知の物理学が宇宙を支配してい
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@588
小柴昌俊がノーベル賞を受賞したのは、カミオカンデという検出装置を作って行った研究によります。この装置はもともと、陽子崩壊を実験で確かめようとして建設されたものでした。しかしこの本来の目的は結局達成されず、思いがけず遠い宇宙から来たニュートリノを捕らえるという大発見を成し遂げてノーベル賞を受賞した、というのも面白いところ
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@600
現在に至っても、陽子崩壊はいまだに全く観測されていないため、これらのモデルのどれかひとつが正しいのかどうか、結論は出ていませ
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@623
宇宙のはじめはすべての力が区別できない状態から始まり、そして重力、強い力の順に分岐して、最後に電磁気力と弱い力が分岐する、という壮大なシナリオが描かれます(図
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@638
標準ビッグバン宇宙論によると、最初に不自然なくらい大きな速度で宇宙が膨張し始めました。もし最初の膨張速度が現実のものより少しでも遅いと、宇宙はすぐに膨張から収縮に転じてつぶれてしまい、宇宙に銀河や星を作る時間がありません。逆に、最初の膨張速度が少しでも速いと、すぐに宇宙の密度が薄くなってしまって、やはり星や銀河などが作られなくなってしまいます。銀河や星のない宇宙に私たちは住むことができませ
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@719
このエネルギーは宇宙が膨張しても密度が薄まらないという特徴を持っています。通常の物質が持っているエネルギーは、空間が膨張すればそれに反比例して密度が薄まってしまいます。しかし、このスカラー場のエネルギーにはそういう性質がありません。どんなに空間が膨張しても、1立方メートルあたりのエネルギー密度はほぼ一定
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@723
宇宙が膨張すればするほど、空間が大きくなってスカラー場のエネルギー総量は増えていきます。すると、膨張させようとする力はますます大きくなって、宇宙の膨張速度は際限なく増えていきます。つまり、宇宙が暴走的に大きく膨張してしまうというわけ
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@726
このメカニズムが、宇宙のインフレーションを引き起こす原因ではないか、と考えられているわけ
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@748
宇宙の誕生からインフレーションが起きるまでのことは、ほとんどわかっていませ
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@754
宇宙全体で見れば、インフレーションが起こった場所とそうでない場所が混在することも考えられます。  私たちに見える範囲の宇宙は、当初ものすごく小さい範囲だった空間がインフレーションで巨大化したものということになりますが、そこからさらに離れた場所では、インフレーションが起こらなかった場所もあるかもしれませんし、いまだにインフレーションを続けている場所もあるかもしれません。私たちに見える範囲よりもずっと大きな観点から見ると、宇宙は極めてでこぼこした奇妙きてれつなものになっている可能性があり
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@762
インフレーションが周りの場所よりも長く続く場所があると、そこだけ体積が大きくなり、別のインフレーション宇宙ができたかのようになります。そしてその宇宙にもまた量子ゆらぎがあるので、そこからまた別のインフレーション宇宙ができ、さらにまたそこから、という具合で、際限なくインフレーションを起こしている領域が続いていってしまいます(図
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@923
測定する直前には、その粒子はあらゆる位置に同時に存在していた、と考えなければ矛盾することが知られてい
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@954
海面には水しぶきが上がることがありますが、これと同じように時空間のゆがみがひどくなると、時空のしぶきのようなものができることもあるでしょう。つまり、まれに時空間が他から切り離されて、分離してしまうこともあると考えられます。  この時空間のしぶきのようなものは、私たちの宇宙と切り離されているので、その間をお互いに行き来することができません。つまり、別の宇宙と考えられます。もちろん、量子論の世界ですから、その宇宙は目に見えないほど小さく、しかも現実化すらしていない確率的な量子ゆらぎ
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@970
宇宙は「無」から始まったというわけです。  この「無」には時間すらないので、順序の前後関係というものがありません。こうなると、この「無」がなぜ始まったのか、などという問いには意味がなくなります。なぜなら、始まりというのは時間があってこその概念なので、「無」には縁のないことだからです。まるで禅問答のよう
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@993
技術的な理由で彼らは時間を虚数にして考えてみました。いわゆる「虚時間」ですが、これは純粋に数学的なトリックです。ホーキング自身は虚時間のほうが自然界の時間であって、人間にはそれが虚数に見えているだけではないかと考えているよう
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@1008
方程式が正しく宇宙の本性を捉えているならば、時間というのはこの宇宙の内部だけで意味を持つ秩序なのだということになり
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@1059
宇宙へ行ってきたというと、ずいぶん遠いところへ行って帰ってきたと思うかもしれません。でも実は、宇宙ステーションがある場所というのは、地面からの距離が300~400キロメートルのところにすぎません。  スペースシャトルで宇宙へ行って帰ってくる場合も似たようなものです。地面からの距離はわずか東京・大阪間程度のものでしかありませ
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@1119
街 灯りもなく、月も出ていない暗い夜空に見える星は、普通の視力の人にとって6等級ぐらいまでの星です。これは空全体に3000個ほど見え
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@1380
現実の宇宙は平坦な3次元空間にとても近い、ということが観測によりわかっています。しかし、完全に平坦なのかどうかについての結論は出ていませ
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@1397
1グラムの物質が持つ質量エネルギーを全部電気エネルギーに変えられるとすると、平均的な世帯の2000年分の電気エネルギーをすべてまかなえてしまうほどの量になり
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@1399
質量エネルギーを効率よく取り出すことができれば、地球上のエネルギー問題は解決
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@1400
原子力発電は、ある意味で質量エネルギーを電力に変換しています。すなわち、ウランの質量エネルギーを0・1パーセントだけ取り出して
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@1514
物質の存在しない真空の空間に一定の密度を持つエネルギーが蓄えられているとき、それは反重力の働きをして、自然に宇宙を加速膨張させようとします。このように真空に存在する一定密度のエネルギーは「真空エネルギー」と呼ばれます。真空エネルギーはダークエネルギーの一種
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@1586
他のエネルギー成分は、宇宙が膨張すればそれだけ薄まっていってしまいますが、ダークエネルギーはほとんど薄まりません。現在よりさらに膨張の進んだ将来の宇宙では、宇宙にあるエネルギーのうち、ほぼ100パーセント近くをダークエネルギーが占めるようになります。
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@1639
ブラックホールも永遠に存在はできません。ブラックホールはなんでも吸い込んでしまう存在ですが、それには例外があります。実は量子効果により極めてわずかずつ光や電子などを表面から放射しています。これは1974年にスティーブン・ホーキングによって理論的に予言された現象で、ブラックホールの「ホーキング放射」と呼ばれています。
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@1684
こうして収縮する宇宙は終わりを迎えます。この終わりの時点は「ビッグクランチ」と呼ばれます。爆発の逆なので「爆縮」です。極限まで密度が高くなると、その先は私たちの物理学ではよくわからない領域に突入していきます。空間がなくなるとともに時間もなくなって「その後」自体が消滅してしまうかもしれません。  一説には、爆縮の後で宇宙が跳ね返り、またビッグバンになるという考えもあります。これは昔からある「振動宇宙論」であり、宇宙は永遠に膨張したり収縮したりを繰り返しているという仮説です。ただし、そうしてできる次回のビッグバン宇宙は、私たちの宇宙のように生命が住みやすい宇宙にはならないだろうという研究もあります。
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@1705
宇宙の膨張速度が無限大になってしまいます。これは宇宙自体の破滅です。有限の空間が無限に大きくなると、もはや時空間が存在できなくなるからです。
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@1708
今回の場合は逆に宇宙が大きくなりすぎて、有限の体積部分が無限大になることで終わりを迎えます。その先には時間が続いていません。この先を考えることは、宇宙の始まりの前を考えるようなもので、時間がなければ「その先」もなくなります。
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@1723
アインシュタインの一般相対性理論により、重力とは時空間のゆがみであることがわかりました。地球や太陽の周りなどでは、時空間のゆがみはほんのわずかです。このため私たちは、重力を感じるということ以外に時間や空間が実際にゆがんでいることを実感できません。でも、細かく測定すると、確かにゆがんでいることを確かめることもできます。  地球上でも、地面の上と高いビルの上では、時空間のゆがみのせいで、お互いに少しだけ異なる時間や空間になっています。このため、高いビルの上においた時計よりも、地上においた時計のほうがほんの少しだけゆっくり進みます。  例えば高さ634メートルの東京スカイツリーのてっぺんと地上での時間の進み方の違いは、一日にたった100億分の1秒程度というわずかなものです。しかし現代技術を使うと、そんな小さな違いでも測定することができます。
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@1737
地球くらいの惑星の周りでは時空間のゆがみといってもわずかなものですが、もっと重い星になると話は違います。そして、極限まで時空間がゆがんでしまうと、「ブラックホール」になります。  ブラックホールの表面では、時空のゆがみがひどすぎるため、時間が遅れるどころの騒ぎではありません。外から見ていると、そこで時間が止まっているように見えます。
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@1741
宇宙飛行士が宇宙船に乗ってブラックホールへ突っ込んでいくとします。これを遠くから見ていると、だんだん宇宙飛行士の動きが遅くなっていきます。
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@1744
これはあくまで外から観察している人にとっての動きです。相対性理論によると、時間は観測者の立場によって異なります。当の宇宙飛行士にとって、時間はいつも通りに過ぎ去っていきます。逆に、周りの世界の時間のほうが速く進んでいるように見えます。そしてブラックホールの表面に到達しても、そこには何もありません。
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@1750
外から見るとブラックホールの表面で時間が止まっているので、そこからは光や電波が一切出てこられないからです。
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@1759
力はあまりに強いので、体が素粒子のレベルにまでバラバラにされた後、最後にはブラックホールの中心部、「時空の特異点」と呼ばれる場所に到達します。ここは時空間の裂け目ともいうべき場所で、私たちが考える普通の時空間の描像は 破綻 しています。もはや時間と空間の広がりがなくなり、通常の物理学で扱おうとしても計算不可能な場所になっています。この先がどうなっているかは予想もつきません。
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@1767
自転するブラックホールの中心部にはリング状になった時空の特異点があります。
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@1769
この特異点は魔法のリングです。このリングを抜けると、そこは全く別の空間に繫がっているからです。  この「別の空間」というのが何なのかはよくわかっていません。私たちの宇宙のどこか遠くの場所なのかもしれませんし、もしかすると、私たちの住む宇宙とは別の宇宙に繫がっているのかもしれません。とにかく時空がねじれていて、図 25 のように他の場所へ出るトンネルが繫がっています。
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@1774
時空のトンネルのことを「ワームホール」(「虫食い穴」のこと)といいます。このワームホールを抜け出たところは、ブラックホールの出口と考えられます。物質を吸い込むブラックホールに対して、物質を放出するその天体はホワイトホールと呼ばれますが、あくまで理論的な可能性であって、実際にそのようなものが発見されたことはありません。
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@1787
ワームホールのくびれた部分に負のエネルギーを持つ物質を詰め込んでおくと、それが安定化する、
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@1808
ワームホールの中では時間の進み方が外とは全く違います。例えば、ワームホールを通過するのに1年かかったとしても、外へ出てきたときには何万年も経っていたということがあり得ます。それどころか、時間を戻って過去の宇宙へ出てくることすら不可能ではありません。
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@1822
タイムパラドックスを解決する手っ取り早い方法は、だから過去に戻ることはできないのだ、と考えることです。それはそれで矛盾は回避できますが、過去に戻れるワームホールが物理的に建設不可能だという証明にはなっていません。人間が理解に苦しむことは自然界に起こってはならない、と言っているのと同じで、何か真実から逃げている気がします。
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@1825
タイムパラドックスを起こさずにタイムマシンが存在できるためには、過去に戻って何をしようと、現在が変わることはないはずです。果たしてそのようなことがあり得るでしょうか。  ひとつの可能性としては、例えば先祖を殺そうといくら画策しても、必ず失敗するようになっているという考え方があります。それどころか、あなたが過去で起こした行動が、あなたの意志に反してあなたに繫がる子孫を先祖に作らせる原因になっているかもしれません。こう考えると、世界の時間の流れに矛盾はなく、過去に戻った人がどのような行動を取ろうとも、巡り巡って結果的に現在の世界になります。そこには矛盾はありません。
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@1834
量子論を除いた古典的な物理学の法則はすべて、未来があらかじめひとつに決まっていることを示しています。
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@1869
人が自由意志で何か選択して行動を起こすたびに、平行世界への分岐が起きていると考える必要があります。さらに、タイムマシンで過去へ戻った人にだけ平行世界を分岐させる能力があるというのは不自然です。人間が自由意志で何か選択をするときにはいつも、その選択をした世界としなかった世界に分岐すると考えるほうがより自然でしょう。
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@1896
古典物理学では未来がひと通りに決まっているので、平行世界への分岐など起こりようがありません。これに対して量子論は、未来は確率的にしか決めることができない、それが自然の本質なのだ、ということを明らかにしました。
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@1930
通常の量子論では、ディスプレイの表示のように人間に見える大きな変化になる前のどこかでなぜか、確率的性格が消え去るものと仮定されています。
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@1942
量子論の解釈問題に答えようとする解釈にはさまざまなものがあり得ますが、それらはいくつかの型に分類できます。     量子論が確率的なのは見かけ上のことで、実際には私たちの知らない何らかの確定した物理状態が背後にあるという考え方   測定装置のように大きなものには量子論の原理が働かず、測定結果を表示する前に測定値が確定しているという考え方   人間の意識が測定結果を判断した瞬間に、測定値が確定するという考え方   測定結果が確定することはなく、人間の意識がひとつの測定結果をもたらす世界しか認識できないという考え方
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@1995
観測者は宇宙の中にいます。宇宙全体を観測する場合、観測される対象が観測者を含んでいるということです。この状況を教科書的なコペンハーゲン解釈では扱うことができません。
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@2028
世界は分岐するだけではありません。ある観測者がほんの少しだけ異なった2つの世界にいたとして、時間が経つとともにその2つの世界の区別がつかなくなると、この観測者にとっての世界はひとつに統合します。あるひとつの結果をもたらす現象に複数の歴史が関与するということは、通常の量子論で示されている特徴でもあります。
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@2047
多世界を考えることで量子論の不可解な性質をすっきりと説明できるという利点がありました。多くの宇宙を考えることですっきりと理解できそうなことがもうひとつあります。それは、この宇宙がなぜか生命活動をするのにあまりに都合よくできている、という不可解な事実です。
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@2068
どうもこの宇宙の物理法則やその他の条件などが、生命を生むためにあり得ないほど微調整されているようなのです。これを「宇宙の微調整問題」といいます。
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@2125
宇宙の微調整問題の最たるものは、ダークエネルギーです。観測されているダークエネルギーの密度は真空エネルギーとしてはあまりに小さすぎる値であり、不可解なほどの微調整が裏で行われていると考えざるを得ません。
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@2148
空間の次元が3であるというのも、高度な生命の存在にとっては大事です。1次元や2次元では、複雑な生命活動はできません。4次元以上では、私たちの体を作っている原子が安定的に存在できなくなります。
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@2153
もし空間の次元が何でもよいのなら、なぜ生命の存在に都合のよい「3」という数字が選ばれているのか不思議です。生命が生まれなくてもよいのなら、100次元の宇宙とか1兆次元の宇宙、極端には無限次元の宇宙を考えることも数学的には可能です。そんな宇宙は複雑すぎて、その中で起きていることを人間は認識できないでしょう。
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@2157
かつてアインシュタインは「この世界で最も理解できないことは、この世界が理解可能であることだ」、と言いました。
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@2165
宇宙の中からでたらめな場所を選んでくれば、そこが恒星の近傍である確率はほとんどゼロです。しかし恒星からはるかに離れた場所では人間が生きられないので、人間が恒星の近傍にいることは微調整でもなんでもありません。
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@2201
多宇宙に頼らずに強い人間原理を解釈することができないとは言えません。量子論においては、宇宙そのものが確固たる実在とは言えないからです。多宇宙に導かれる多世界解釈を別にして、量子論の原理を宇宙全体に当てはめれば、宇宙を観測するまで宇宙の状態が確固たる存在としては確定しないことになります。  この考えをさらに推し進めると、特定の物理法則や物理定数の値を持つ宇宙の存在自体が、その中に生まれる生命体によって観測されるまで確定しないということも考えられます。この宇宙を観測するものがいて初めて宇宙が存在するようになるのかもしれません。そして観測するものがいない宇宙は存在できないのかもしれません。
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@2210
ホィーラーの参加型人間原理をもとにして、「最終人間原理」なるものを考えだしました。知的な情報処理をするものが宇宙の中にいつかは存在しなければならず、いったん存在するようになればそれはなくなることがない、というものです。
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@2258
論理的に可能な宇宙の数は、1兆を 41 回1兆倍して、さらに1億倍したほどの数( 10)ほどもあるといいます。
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@2263
たくさんの可能な宇宙を寄せ集めたマルチバースのことを、「風景」(ランドスケープ)と呼びます。宇宙のとり得る可能性のすべてを、複雑に入り組んだ山や谷からなる風景になぞらえ、その風景の中にある無数の谷底のひとつひとつが、安定して存在できる宇宙の候補だと考えるイメージです。
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@2272
現代の私たちは、地球に月ができたのが太陽系の歴史の中での偶然の出来事であることを知っています。そして、もし月がなければ、地球の地軸は安定せず、海には潮の満ち引きもなく、地球は8時間で自転するなど、地球の環境は激変し、人間のような知的生物が生まれる見込みは極めて低くなります。地球に月があることを弱い人間原理で説明しても、それほど違和感はありません。
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@2295
古典的な物理学では、人間は宇宙の中にいてもいなくてもよい、取るに足りない存在と考えられていました。しかし、相対性理論や量子論によって、観測を行う人間の存在が再び重要性を帯びてきました。量子論の解釈問題は、人間の存在が宇宙の中心的なものであるという可能性すら呼び起こしました。宇宙の微調整問題を解決するための強い人間原理には、人間の存在を宇宙の根本原理にまでしようというニュアンスすら含まれています。
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@2380
ゲーデルの不完全性定理は、数学的構造それ自体では自己完結した完全な論理体系になり得ない、という衝撃的な定理です。  これによれば、ある宇宙を表す数学的構造があるとしても、その数学的構造の中だけではその宇宙が存在できるかどうかを証明できないことになります。
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@2452
マルチバースを考えると微調整問題が理解しやすくなるからというだけの理由で、莫大な数の多宇宙の存在を仮定するのはあまりに安易な方向である可能性もあります。
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@2458
もし存在という概念が人間の脳の中だけで考えられた二次的なものならば、マルチバースは何の解決にもなりません。私たちの宇宙と切り離されたマルチバースが存在するということ自体に意味がなくなってしまうのですから。  この考えの上に立てば、粒子や物体の存在とその振る舞いを表す数式自体、それを観察する人間の脳の中で行われる情報処理の仕方に縛られているかもしれません。物理法則の形は、私たちが世界を把握する方法に依存している可能性があります。
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@2496
時間や空間や物質の存在、そして物理法則までも、人間の認識方法や論理的思考様式を離れて存在するものではないことが明らかになるかもしれません。  もしもこういうことが正しく、物理法則が人間の認識方法や思考様式に依存するものならば、人間原理やマルチバースを考えるそもそもの動機であった、宇宙の微調整問題に対する見方も変わってきます。微調整問題は、人間と関係のないはずの物理法則やそのパラメータがなぜ人間を生むように微調整されているかという問題でした。  しかし、物理法則が宇宙の一部を人間が切り取って認識している世界にだけ通用するものとすると、認識をする主体である人間を存在させるような法則しか見つかり得ません。
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@2520
私たち人類はこれまで 20 万年も栄えてきました。しかし、人類が今後何億年も栄え続けることは極めてありそうにない、とゴットは言います。なぜなら、何億年も栄え続ける人類の歴史の中で、私たちがその最初のわずか 20 万年に生きている確率は極めて小さいから、という論理です。
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@2529
地球上の人口が将来にわたって増えていくとすると、未来にずっとたくさんの人がいます。すると、未来に生まれずに現代に生きているという事実は、確率的にかなりありそうもないことになります。このため、人類の存続期間の見積もりは、大幅に下方修正しなければならなくなります。
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@2535
この確率の議論に基づくと、地球人よりもはるかに多くの人口を持つ知的生命が他に存在する可能性も、かなり低くなります。もし過去から未来のどこかで、何千兆人もの宇宙人を含んだ文明がこの宇宙のどこかで栄えるとすると、私たちにとってそちらの文明の一員として生まれる確率のほうが、この地球上に生まれる確率よりもはるかに高くなります。
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